ケース面接とは、コンサルティングファームや外資系IT企業などの採用選考において実施される「例のあの感じ」の面接のことです。
・・・ふざけた説明ではありますが、ふざけているわけではありません。
実は厳密に定義されているわけではありません。
「あらかじめ設定されたテーマがある」とか「論理的に解を導く」とか「面接官と議論しながら深めていく」とか、様々な方によって種々の定義がなされてはいますが、いずれも「これ」と特定できるものではありません。
そのため、そもそも「ケース面接をやります」と仮に宣言されていたとしても、どのようなスタイルで面接が行われるかは、千差万別ということになります。
さらには、一見ケース面接っぽい面接がなされていても、それを採用企業側が「ケース面接です」と説明していない場合もあり得ます。
一言で、「ケース面接」といっても、それぞれの企業が自社のコンサルタントに求める資質である、論理的思考力や課題解決力、コミュニケーション力などを評価するために、その企業なりの方法でケース面接を実施している、というのが実情なのです。
厳密な定義が難しいとはいえ、コンサルティングファームやM&Aアドバイザリーにおいて広く行われているケース面接は、大きくは下記にて分類できると考えます。
定型ケースは、よく市販の書籍などで紹介されている、コンサルティングファームらしいケース面接になります。
よくあるテーマとしては、「売上拡大策の立案」「利益拡大策の立案」「採るべき成長戦略の立案」「顧客数の増大策の立案」などが挙げられます。
このような定型ケースの中でも、テーマの設定や前提条件として提示される情報量は千差万別ですが、前提条件となる情報が配布資料として市場規模やマーケットシェア、競合他社の状況などが示されているパターンもあります。
特に、比較的規模の大きな戦略コンサルティングファームや監査法人系・総合系ファームの戦略事業部・ストラテジー部門においては、面接官による応募者の評価のブレを防ぐために、あらかじめ事細かにテーマや前提条件が組みあがっているケース面接が実施される可能性が高いです。
このような定型ビジネスケースは、ケース面接の有無について事前にある程度予測を立てることができます。弊社でも過去の応募者になされた面接事例を収集しているので、ケース面接の有無について質問をいただいても、ある程度、自信をもって回答することが可能です。
比較的小規模な戦略コンサルティングファームでは、テーマや前提条件の設定に至るまで、面接官がその場で決めていくスタイルで実施されることが多い傾向があります。
例えば、「~~さん(応募者)は〇〇高校出身なんですね。野球部が強豪ですよね。では、プロ野球のファンの増大策について考えてみましょう。」というように、自然な会話の中からテーマが設定されていくスタイルです。
このようなスタイルは突発型ビジネスケースと呼べます。
このタイプのケース面接は、知識の有無が出来映えを左右しないテーマを設定する技量、過剰に複雑にならないように前提条件を設定する技量、妥当な時間で解を導出するために議論をファシリテートする技量など、多くの技量が面接官に必要になります。
逆に言えば、そのような技量を持ち合わせている面接官であれば、予定していなくてもその場でケース面接を実施してしまえることになります。
このタイプは、ケース有無について断言することが飛躍的に難しくなります。戦略コンサルティングファームや監査法人系・総合系ファームの戦略事業部・ストラテジー部門、M&Aアドバイザリーの事業再生部門などに応募する場合は、「突発型ビジネスケースはいつでもありうる」と考え、準備しておいた方が無難かもしれません。
M&Aアドバイザリーのトランザクション部門、バリュエーション部門などでは、伝統的に「DCF法を用いて、この企業の企業価値を算定せよ」などの課題を解くというスタイル面接が頻繁に行われています。
また、監査法人系・総合系コンサルティングファームの公共・官公庁インダストリー部門などにおいては「~~(特定の社会課題)についてその解決策を立案せよ」といった、課題に回答することが求められる面接が昨今多く実施されています。
このような、応募部門での業務において、日常的に用いられる手法や発想方法を面接内で簡易的に問うタイプのケース面接というのも増えています。これを特化型ケースとしています。
広い意味では、これらもケース面接と呼ばれる面接の一種と考えていいことは確かですが、定型・突発型ビジネスケースとは、その準備において必要なことが大きく異なります。
もちろん、特化型ケースはその評価・査定方法が、その他のタイプのケース面接とは若干異なります。
多くの場合、これらは面接の設定段階において、応募企業側から事前に「課題に応えてもらいます」という案内があります。比較的対処しやすいタイプのケース面接と考えてよいと思います。
エージェントとのコミュニケーションにおいて、「ケース面接はありますか?」と皆さんが問われたときに、エージェントが「あります」と言っていたとしても、このような特化型ケースであるかどうかは、よくよく確認してください。そして、提示されるケース課題の内容に従って、準備を進めてください。
さて、本記事の主旨ともいえる「ケース面接はありますか?」と言われて、なんとも言い難くしてくれるのがこの「隠れケース」の存在です。
隠れケースとは何か?非常に定義が難しいものではあるのですが、定型・突発型ビジネスケースと同様、「論理的思考力」や「コミュニケーションスキル」、「ストレス耐性」「成熟した振る舞い」が求められるのですが、一見、ビジネスケースのような体裁をとっていないものです。
実際に隠れケースとして出題・質問されがちな内容としては、
〇現職企業(業界)における課題はなんだと思いますか?
〇過去の失敗を振り返って、その失敗を今ならどのように対処しますか?
〇現在行われているコロナ対策について、どのように評価していますか?
〇(学生時代に専攻した領域を指して)どうしてその領域に社会的な意義があると考えたのですか?
非常に珍しい質問としては、「あたなの強みは何ですか?また、その強みが日本全国でどのレベルに位置しているか、説明してみてください。」という質問もありました。
このような「隠れケース」に該当するような質問は、列挙してみるとみなさんも「ケース面接的に」回答を導くことが可能であるようなイメージが湧いてくるのではないでしょうか?
一見、普通の面接のような体裁をしてはいますが、コンサルタントに求められる基本的な資質である、論理的な思考力、課題発見・解決の技法、抽象的・複雑な事象を言語化できるコミュニケーション力の有無を見極めています。
つまり、ケース面接の体裁を採っていなくても、「ケース面接的に」回答を求められる質問というのは、コンサルティングファームやM&Aアドバイザリーの面接においては大いにあり得る、ということです。
私たちが、「ケース面接はありません」と回答することに、どうしても抵抗がある理由を、ご理解いただけたのではないでしょうか?
「ケース面接はありますか?」と問われて「ない」と言ってしまった場合、隠れケースのような質問があった場合には正しいアドバイスができていたとは言い切れないと、どうしても考えてしまいます。
その結果、過去に定型ビジネスケースや特化型ケースが出題されていなかったとしても、さらに、突発型ビジネスケースが行われているような傾向がなかったとしても、「ない」と答えるのはとても抵抗があるのです。
逆に言えば、隠れケースの存在がある限り、「ケース面接」の有無に関わらず、「ケース面接のトレーニング」を行っておくことはとても有効である、と言えます。
弊社では、ケース面接の準備をするための基礎的なテキストや面接トレーニングを実施することも可能です。
ケース面接対策も含めて、転職活動を始めてみようかな、という方は、ぜひTY&Partnersにご相談ください。